子育て×哲学×社会学「この青空を、君へ」

父から息子へつなぎたい思想

その「ガクチカ」が採用担当に響かない理由

現職でも採用担当を務めている
これまでの社会人人生のなかで、新卒、中途、アルバイト採用を担当してきた
一部上場、中堅、ベンチャー企業で、1000名は面談や面接をしてきている。

子育てと同じくらい、いやだからこそ、就職活動を支援したいという想いは強い。
そのため、OB訪問(Webだけど)を受け入れて後輩の相談に乗ることがよくある。

数年前から、「ガクチカ」という項目を就活生が話してくれる。
最初聞いたときは「ガクチカってなに?美味しいの?」とびっくりしたものだが、 「学生時代に力を入れたこと」という項目とのこと。

この言葉作って広めた人がどのような意図かは分かりかねるが、
想いをもって「ガクチカ」という言葉を作っていたとしても、
どうも話をする学生達は、その意図を汲み取ることができずにいるように思う。

この「ガクチカ」という項目に対して、素直に学生時代に力を入れたことを話してくれるのだが、
企業の採用担当者は本当にその話しを聞きたいだろうか?

答えはNOで、全く響いていないことがほとんどだ。

一歩この問いの意図を汲んだ就活生は、
学生時代の活動を通して、これらのことを強みとして学んだと話してくれる。

リーダーシップ
行動力
コミュニケーション能力
諦めない粘り強さ
全体を俯瞰すること
相手の気持に立って考える大切さ

などなど

君たちのように優秀な学生達が、
採用面接という場でこれらの単語で力を入れたことを語っても、
正直採用担当にとっては聞き飽きたフレーズ。

これらの強みは、入社したら前提条件として持っていてほしい力だし、
仮にその力を学生時代に身に着けたとして、相当数の就活生が同じ採用面接を受けていたとしたら、
何を基準に私達採用担当は選ぶだろう?

採用担当としては、この視点も持ってもらいたい。

君たちが「就職活動」をしているように
僕たちは「採用活動」をしている

一人採用するためにどれだけのお金を投資しているだろう。 入社して一人前になってもらうためにどれだけの時間を教育に使うだろう。

決して「お金」や「時間」を問題にしているのではない。

それだけ、「本気で仲間を集めたい」と思っているというはなし。

それは、能力が高い方が入社してくれたほうがうれしい。
ただ、能力が高いだけで採用することはできない。

そういった能力は、「必要条件」かもしれないが「十分条件」ではない。
「かもしれない」とつけるのは、そのような能力は入社してからでも身につけられるから。

では、そのような能力以上に僕たち採用担当はどこを見ているのだろう?

君たちが「就職活動」をしているように
僕たちは「採用活動」をしている

と言った。

本気で仲間を集めたいと言った。

その仲間に何を求めるだろう。

うちの会社のこと好きになってくれるかな?
 それは、会社理念への共感やサービスへの愛情をもってくれるか知りたいから

これだけは譲れないという想いは共有できるかな?
 →それは、何がうれしい?何がいやだ?その感覚は僕たちと似ている?と確認したいから

たとえ立ちはだかる壁が高くとも一緒に乗り越えてくれるかな?
 →それは、正解のない問いになんとか答えだせるかな?
 失敗や挫折を目の前にしたときに、この仲間となら乗り越えられる!と折れかけた心をまた立て直すことができるだろうか?を知りたいから

例えばこんなことを考えている。

だから、テンプレート的にどの企業でも同じ「ガクチカ」を話されてもほぼ採用担当には響かないよ。
たまたま、書いた内容がその企業の採用担当に響くこともあるかもしれないが確率は限りなく低い。

ガクチカというお題を通して、応募した企業が求める人材と自分がどれだけ合っているかを説得力をもって語れるか。

「就職活動」と「採用活動」の交差点を議論したいんだ。
「自己分析」と「企業研究」は決して切り離されたものではない。

「自己分析」と「企業研究」は表裏一体だということを理解してほしい。
相手がどんな人材を仲間として迎え入れたいと思っているのか。
そして、自分もその仲間としてこの場で働きたいと思えるのか。

そのことを就職活動を通じて考え抜いてほしい。
仲間として一緒に働きたいという場がなければ、
起業という道だってある。企業に就職する以外でも働く方法はいくらもある。

ガクチカ」というお題をそこまで見つめて考える題材にしてくれればと願う。

そして、君へ

君の時代にも「就職活動」という言葉はまだあるだろうか。
もしかしたら、無いのかもしれない。
ガクチカ」という言葉はおそらくないだろう。

自分のことを話すだけで精一杯になるかもしれない。
ただ、君が就職活動者であると同じく、相手は採用活動者。
相手の立場や想いも理解して、就職活動をしてほしい。

これは、なにも就職活動に限ったことではないとパパは思うよ。

この青空を君へ