私淑する田坂広志先生の新著「田坂広志 人類の未来を語る」
読了したので、その所感を。
「進化」の本質は「多様化」
この言葉が、とても響いた。
それは、今の自身のテーマが、
「信念対立を乗り越え、互いにより良く生きるには、どのような社会ルールを設計し、運用すればよいか」
であり、その問いに道筋を与えていただいたから。
世界が、多様化に向かっている。
そのことを受け止められるほどに、まずは、自身の心の中の多様性を認められているか。
この問いが新たに立つ。
2023/9/12
誕生日の日記を振り返える。
---ここから---
答えのない問いを問い続けるときに、
どうしたら、答えの出せる問いに変更できるか?
を考えたい。
そのためには独断論にも懐疑(相対)論にも陥らない両者を調停し続ける仕方が大切だ。
カントが言うには、
人間の「経験」を超えた領域は、認識できないから「推論」するしかない。
推論の立場を突き詰めると2つの立場に集約されるらしい。
独断論者は、世界は有限。最小単位はある。自由はある。必然的存在はある
と言うし、
懐疑論者は、世界は無限。最小単位はなし。絶対的自由はない。必然的存在もなし
と言う。
独断論者は、答えは出せる。唯一絶対の答えを。
と言うし、
懐疑論者は、答えなんて無い。人の数だけ答えがある。
と言う。
生きていると、どうやら「唯一絶対の答え」というのはなさそうで、だからといって、「人の数だけ答えがあるよね」を手放しに認めてしまうと、すべてのことは等しく正しいということになるので、「等しく正しい」訳なんて無いとも思う。
独断論に陥ると、自分(達)が一番正しいと、信念対立を生みつづけるし
懐疑論に陥ると、みんな正しいんだからと、物事が前に進まない。
社会を回していくには、
その2つの立場を調停し続けなければいけないのだと思う。
そのためには、徹底的に考えて、どの立場の人も、
「そのことに関してはどうやらそう考えざるを得ない」
と納得する合意形成をし続けることが必要なのだと思う。
---ここまで---
自身の心の中にも、振り子のように
独断論的に振れる自分と、懐疑論に振れる自分とがいることに気づく。
このこともまた、どちらかを否定するのではなく、
弁証法的に、止揚(調停)していく構えが必要なのだろう。
社会の「意思決定」に参加したいと願うとき独断論的自分が立ち現れ、
「意思決定」への参加を諦めるとき、懐疑論的な自分が立ち現れる。
「意思決定」への参加という考え方ではなく、
「変革」への参加と視点を変えたならば、
独断論的に正義を振りかざす自分や懐疑論的に答えなんてないと半ばあきらめ、
自分の目に見える人、自分の好きな人が幸せならそれでいいと思う自分とを調停できる予感がする。
絶対的な唯一の真理は自分の外にはどうもなさそうだ。
自分の心の中や他人の多様な価値観を認めつつ、包摂しつつ、個々人が幸せを追求する社会。
途方もなく、難易度の高い歩みと思うが、
「進化」の本質が「多様化」であるならば、その進化の方向に向かって、私も生きてみたい。
最後に今の自分に心に響いた箇所を引用。
(Kindleで拝読したため、ページではなく、位置番号)
「高度な複雑系」を、人為的に「制御」することはできない。 しかし、その「創発」を、意図的に促すことはできる。 位置: 422
社会システムを、 「機械的システム」を操るように制御や操作することはできないが、 「生命的システム」としての社会の創発と自己組織化、進化と相互進化を、 望ましい方向に促していくことはできる。 位置: 424
社会全体の挙動を変えていくためには、 社会を構成する「個人」の行動ルールを変えていく。 位置: 434
社会の創発と自己組織化を望ましい方向に促していくためには、 その「行動ルール」である「法律」と「倫理」が、 これまで以上に、重要な意味を持つようになるのである。 位置: 436
「抑圧された自己」や「隠れた自己」を発見し、受容し、表現すること。 それは、人間にとって、深い「癒し」 位置: 3,914
我々が、自己の中に、 「多様なパーソナリティ」を発見し、受容し、表現するということは、 自己の中に、「多様な価値観」が共存することを認めるということである。
なぜ、「多様な価値観の共生」が語られる時代において、 皮肉なことに、「一つの価値観への偏向」が起こるのであろうか。 その理由は、実は、明確である。 我々一人一人の心の中に、 「多様な価値観の共生」が、実現していないからである。 位置: 3,969
参加型民主主義の「参加」とは、 単に「社会の意思決定」に参加することではなく、「社会の変革」に参加すること 位置: 1,242
「進化」という言葉は、本来は、生物学の用語。 そして、それは、単なる「連続的な変化」ではなく、 「不連続的な飛躍」を意味した言葉である。 位置: 2,377